九州大学 芸術工学部 工業設計学科 KYUSHU UNIVERSITY SCHOOL OF DESIGN DEPARTMENT OF INDUSTRIAL DESIGN

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卒業研究

工業設計学科では、すべての学生が4年生になると研究室に配属されて、1年かけて専門分野の研究を行います。1年生から3年生まで万遍なく学んできた、人間工学・知的機能工学・インダストリアルデザインの3つの分野を統合した知識や経験の上に自分の専門を深めた集大成が卒業研究です。ここでは、2013年度卒業学生の幅広い研究成果をご紹介します。

2013年度・卒業研究

  • タッチセンサーを利用した児童の座る姿勢を改善する手置き具の試作
    立井 孝則
    利き手の反対の手でコンピューターマウスのような手置き具を児童に持たせると、座る姿勢が良くなるとの報告があります。そこで、どうすれば児童が積極的に手置き具を持ってくれるかについて検討しました。そして、持った時間に応じて児童に何らかの利益を与えるという機能を手置き具に組み込むこととしました。本研究では、タッチセンサーを組み込んだ手置き具を実際に試作し、持った時間を計測・収集できることを確認しました。
  • 高齢者の「聞こえ」を補助するデザイン提案
    瀬野 ひかる
    加齢性難聴者の補聴器使用率の低さに着目し、高齢者の聴覚支援のきっかけをつくる「補聴玩具」のデザイン提案を行った。家庭内での使用を想定し、2つ1組の再生・集音機能を持つ機器が、スイッチの切り替えによって糸電話のように相互に作用する。遊びの要素を取り入れることで、使用に際するネガティブな感情を取り除き、ハイテクな機能の実態に触れながら、より気軽な聴覚支援を行う。
  • テンセグリック構造により不思議なつながりをデザインしたアームスタンド
    高畑 雅
    テンセグリック構造をアームスタンドのアームに利用しました。テンセグリティ構造とは、部材の力のつりあいに、紐の引張力も使う構造です。部材が浮いているように見えることが、テンセグリティ構造の特徴なので、アームの関節が離れて見えるように、紐を使った擬似ジンバル機構により関節を製作しました。姿勢を固定している紐の長さを調節することで、関節の角度を変更します。
  • tDCSを用いた運動皮質の抑制が行為観察時の脳活動に及ぼす影響
    池田 悠稀
    脳の中心溝付近に存在する感覚運動野は、他者の行為を観察するときに活性化します。しかし、感覚運動野が観察した行為の理解に関わるとされることは少なく、行為観察中に感覚運動野が活性化することの意義は明らかではありません。本研究では感覚運動野の活動を経頭蓋直流電気刺激(tDCS)によって一時的に抑制し、その際の脳活動及び主観評価を測定することで、感覚運動野が行為観察中の脳経路においてもつ役割について検証しました。
  • 背負いやすいランドセルに関する研究
    内田 翔
    ランドセルは荷物が重いときは決して背負いやすくありません。そこで、伝統的運搬具の背負子に秘められた力学的視点を参考にすれば肉体的負担が小さいランドセルを作れるのではないかと考えました。本研究では、既存のランドセルと荷重を仙骨で支持できるように改造したランドセルを用いて実験を行い両者の相違を生理値および主観申告により評価しました。その結果、改造したランドセルの方が楽に背負えるとの結果が得られました。
  • 複数の生理指標を用いた色光の生体影響評価の重要性
    落合 将太郎
    光の作用には、色や明るさを知覚する視覚作用の他に、概日リズムの調節やメラトニンという睡眠ホルモンの分泌抑制といった非視覚作用が存在します。この非視覚作用には青色光が最も強く影響を与えることがわかっていますが、心理作用を介した色光の影響までは解明されていません。本研究では、心理的に興奮作用のある赤色光、及び心理的にニュートラルな白色光と比較することで、青色光による非視覚作用を介した生理指標の妥当性について検討しました。
  • ミュージアム型 立体駐車場の提案
    尾宮 真有
    「クルマは人生を豊かにする」という考えのもと、本研究では自分の人生の相棒となるクルマに出会うきっかけを与えることを目的とした。そこで、立体駐車場に眠っている自動車を有効に活用し、誰もが自然とわくわくするクルマの“ミュージアム”を提案する。個人所有のクルマを展示することで、ショールームとは異なり、オーナーとクルマの絆を感じることができる。自分のカーライフに思いを巡らす場、またはクルマを通じた交流が生まれる場になることを願う。
  • 高速点滅光によるメラトニン分泌の軽減作用
    傍示 顕信
    近年、夜間に浴びる光によるメラトニンというホルモンの分泌が抑制されていることが問題となっています。このメラトニン分泌の抑制が原因ではないかと考えられている健康被害には、女性における乳がんリスクの上昇等が挙げられます。本研究では、一定の光を出す定常光と、高速点滅するパルス光の2種類の異なる調光方式を用いて、メラトニン分泌抑制の差異について検討しました。実験の結果から、定常光に対しパルス光の方がメラトニン抑制を軽減する可能性が示唆されました。
  • 言語刺激による事象関連電位と遺伝子多型の関係
    欅田 正樹
    コミュニケーションによって得られる情報の受け取り方には個人差があり、同時に言葉に対する感受性にも個人差があると考えられます。この個人差の要因として文化的背景、遺伝的背景があります。この研究では遺伝的背景による一つの要因としてセロトニントランスポーター遺伝子をあげ、遺伝子タイプによって言葉の感受性が異なるか事象関連電位を用いて検討しました。
  • 福岡市の公共交通機関を活用した観光案内のデザイン提案
    白石 響乃
    福岡市をより魅力的な観光地にするために、公共交通機関を用いた新しい観光案内のかたちを提案しました。現在、福岡市において目的地へと向かう観光客が交通機関を選択するための指標は存在していません。このバラバラな要素を1つにするために、駅から目的地までの間に中継地点を設け、それを全て包括するような核となる観光案内所を作ることにより、交通機関を選択する際の手助けとなるようにしました。
  • 閉所環境が心理生理値に与える影響
    関谷 崇寛
    本研究では、現代のカプセルホテルなどを代表とするような閉所環境が心理生理値にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的としました。今まで、閉所環境に着目した研究は少なく、目立った結果は得られていませんでしたが、本研究では閉所環境が脳波に影響を与えることが示唆されました。これを基礎研究とし、実生活における空間評価などに応用していければ良いと考えています。
  • 歩行者に自転車の気配を示唆するデザインの提案
    中澤 豪助
    人々が街を安全に通行するには、五感を使って様々な情報を集め、周囲の状況を把握することが重要です。本提案は、ハンドルの動きやフレームの傾きなどをもとに、自転車の進む方向をLEDの光によって示唆し、同時に音を発することで自転車の存在を周知します。通行者が察知する情報の1つとして、自転車の動き・気配を表示することで、通行者が自転車の存在に気づくヒントとなり、より安全な通行ができると考えました。
  • 食育の実践を促すツールのデザイン提案
    中西 大
    「食事バランスガイド」で使用されるSV(サービング)という単位を用いて、食材食品を選ぶための新たな判断基準「SV Label」を提案しました。ラベルは5種類作成し、表示内容はその品目における 1日の目安量と、その食材食品がどのくらいの量に値するかを示し、加工食品及び生鮮食品両方に表示できる基準を設けました。これにより、消費者は買い物をする時に食事のバランスを考えられるなどのメリットが期待できます。
  • 都市部における保育需要変化に適応した空間デザイン提案
    中平 勁士郎
    現在日本は非常に多くの待機児童を抱えている。保育士不足や保育所として適切な立地がないことなど原因は様々であり、多くの対策がとられているが、成果はまだあまりでていない。ここ福岡市南区にも多くの待機児童が存在するが、本研究では待機児童数を減少させるための地域全体で行える様な保育のシステムと、将来的に減少が予測される保育需要に対して持続的な利用が可能である保育空間の提案を行った。
  • 災害時における神社活用の提案
    萩本 裕太
    神社の境内に配置する防災施設「地震殿」と、それに関するシステムの提案。地震殿の機能は、参拝客に米をお供えしてもらい、それをα米に加工しパッケージに保管しておくことで、災害時への備えとするものである。災害が起きた場合、神社間の独自のネットワークである神社本庁を介して全国の地震殿から、政府を挟まない迅速な被災地への食料支援を行う。また、加工を月毎の祭事として行い、地域への防災意識の喚起の役割も果たす。
  • 幸せの事例から考えるデザイン指針の提案 - 大学生をケーススタディとして
    濱田 紘輝
    近年、人間らしい生活・自分らしい生活による幸せといった意味の生活の質(QOL)向上が重要視されています。そこで本研究は、若者が求めている「幸せ」に着目し、その幸せの事例調査・分析を通じて、若者のQOLを向上させるモノ・サービスの提案に貢献するデザイン指針を提案しました。
  • 危険から子どもを守る母親の脳活動
    林 小百合
    子どもに関連した画像を見たときの母親・母親でない女性の脳波(事象関連電位:ERP)を測定した。母親と子どものいない女性の脳波を比較すると、注意に関連する成分(P300、LPP)に有意な差があった。このことより、母親は子どものいない女性に比べ、育児環境における刺激に対して注意的に反応することが分かった。
  • 就職活動におけるサービスデザインの提案 ー業務旅行に焦点を当てて
    古川 真理恵
    就職活動中に採用試験のために行う旅行に焦点を当て、就活生の負担を軽減するサービスの提案を行いました。就活旅行中にどのような負担や課題が発生しているのか把握するため、就活経験者に旅行中に発生した感情をグラフにしてもらい、その理由を聞き取るヒアリング調査をしました。調査から「トイレについての情報不足」「空港内の事前情報の不足」など8つの課題を抽出し、各課題に対して考察や提案を行いました。
  • 人工林における問題解決のためのロボットデザイン提案
    古屋 伸男
    近年、日本では放置された人工林が問題となっている。問題の早急な解決のためにも、人工林を適切に管理するシステムが必要である。そこで、放置人工林の問題点を調査・分析し、森林調査による現状把握と間伐対策が必要であることが分かった。放置人工林の管理のために、森林調査、間伐、およびその支援を行う3つのロボットを提案する。
  • 湿潤環境に対する印象がオノマトペの認知過程に及ぼす影響
    堀 夏子
    オノマトペは感覚器官との結びつきが強い表現だと言われています。環境(温冷乾湿)を表現する語の中で湿潤についての語彙が多いことから、ヒトは湿度に対する感受性が高い可能性が考えられます。そこで、この研究では高湿度環境がオノマトペの認知過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、高湿度環境下で乾湿を意味するオノマトペと副詞を聴取した際の事象関連電位について検討を行いました。
  • 一人暮らしマンションにおけるコミュニティ形成の提案
    松本 夏実
    東日本大震災において、地域コミュニティの大切さが再認識されたものの、単身者向けのマンションではコミュニティ形成がほとんど行われていません。そこで日本人が消極的であることも踏まえ、単身者でも参加しやすいコミュニティ形成を目指しました。居住者の情報を共有できるロッカーは、会話のネタ作りのサポートをします。また、一人暮らしの人が求める「広いキッチン」や「大きい本棚」を設置した共用スペースを提案しました。
  • 八女の石材産業及び伝統産業振興のためのデザイン研究
    山下 大智
    私の父は八女の伝統工芸である石灯籠を製作しているが、全国の伝統産業と同様に八女の石材産業も衰退しつつある。そのような状況をデザインによって改善し、八女の石材産業だけではなく伝統産業や八女地域も視野に入れた持続的な振興を目的として研究を行った。八女の伝統産業を要素として得られた『弔い』に着目し、八女の伝統産業や地域性を考慮して樹木葬を中心とした弔いのシステムや樹木葬園の空間設計を行った。
  • 松葉杖のグリップ径が杖使用時における手部の負担に及ぼす影響
    横田 知明
    松葉杖使用時には手部における負担が問題となる。本研究ではグリップ径と手部の負担との関係を検討し、負担の少ない最適径を導くことを目的とした。直径25〜50mmの各グリップ条件で杖歩行時の手関節角度、掌の圧力分布および把持における筋活動を測定したところ、細いグリップでは掌の圧迫が大きく、太いグリップでは手関節部への負担増加が示唆された。これらのことより、最適なグリップ径は35mm〜40mmであると考えられた。