九州大学 芸術工学部 工業設計学科 KYUSHU UNIVERSITY SCHOOL OF DESIGN DEPARTMENT OF INDUSTRIAL DESIGN

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卒業研究

工業設計学科では、すべての学生が4年生になると研究室に配属されて、1年かけて専門分野の研究を行います。1年生から3年生まで万遍なく学んできた、人間工学・知的機能工学・インダストリアルデザインの3つの分野を統合した知識や経験の上に自分の専門を深めた集大成が卒業研究です。ここでは、2022年度卒業学生の幅広い研究成果をご紹介します。

2022年度・卒業研究

  • 路上ゴミの事例収集のしくみを用いたビジネスモデルのデザインの研究
    木下 晴貴
    ポイ捨てゴミ問題を、ポイ捨てを誘発するシグニファイアを逆利用したデザイン提案により解決することを本研究における目的とする。当初、方法として路上に落ちているゴミを撮影し事例収集、その中から共通点を分析、考察を交えてシグニファイア抽出を行う予定であったが、途中この方法の問題点が発覚した。このことから新たな調査方法としてアプリケーションを中心としたポイ捨てゴミの事例収集サービスの仕組みを提案する。
  • おみくじの要素とその活用に関する研究
    山根 祐香
    おみくじとは神社仏閣で引くことができる占いの一種である。長い歴史の中でおみくじには様々な形や引き方が生まれ、神社仏閣以外の場所でも利用されるよう変化していく。本研究では多様化するおみくじの持つ要素を考察し、その要素を取り入れるシーンとして置き菓子を設定しコミュニケーションツールとしてのおみくじの提案を行った。
  • 和を感じるイメージの評価構造の研究
    ― 中国人学生と日本人学生の比較
    福井 凜太郎
    近年の世界的な和ブームとインバウンド需要の拡大により訪日外国人は増加しており、その中でも中国人は高い割合を占めている。そこで、和を感じる製品の印象評価を因子分析を用いて行うことで、"和"というイメージの評価構造を中国人学生と日本人学生それぞれにおいて明らかにした。そして、可視化した両者の違いは日本人向けとは区別した中国人観光客に向けた製品設計に活用できると考えられる。
  • 日常生活の待ち時間の要因と対策に関する基礎的研究
    山田 信太朗
    本研究では、日常生活の中の待ち時間を要因に着目して整理を行った。また、待ち時間への対策を調査し、待ち時間の要因との対応を整理することを目的とする。待ち時間の事例を収集し、待ち時間が「順番待ち」、「タスク待ち」の2段階から構成されていることがわかった。「順番待ち」、「タスク待ち」のそれぞれの要因を分類し、要因ごとにどのような対策が行われているか調査を行った。
  • 小学生のための書写の授業と道具のデザイン研究
    飯岡 幸子
    筆で字を書くことが減ってきている現代において、小学校の書写の授業は、書道を体験する重要な機会な機会となっている。実際の小学校の書写の現場では、お手本と自分の書いた文字を客観的に比較することが難しいこと、準備や後片付けが大変だということがわかった。そこで、小学生が積極的に取り組めるようにオリジナルお手本づくりとアドバイスタイムのある授業と自分の机で筆を簡単に洗うことができる道具を提案した。
  • 水らしい状態表現に関する研究
    前原 圭佑
    古代ギリシャの記憶に残る最古の自然哲学者タレスによると万物の根源であるとされている水。その水との体感距離はパンデミックにより離れ、その離隔による自然への渇望は、自然をインテリアに取り込むインテリアスタイルの流行として顕在化した。そこで水を用いずに水らしさをインテリアに流用することを目的とし、製作を行い、内径1mの円筒状空間を製作した。
  • キャンパーのための木炭のデザイン研究
    嶋村 由莉亜
    炭の扱いは慣れない初心者にとっては難しい。一方で既存の初心者向けの炭はマッチ1本で着くなど非常に簡単に扱うことができるため、過程を楽しむキャンプの魅力も損なわれているのではないかと考えた。また、キャンパーを対象にアンケート調査を行ったところ、炭の扱いは慣れない人には難しく、さらに、多くのユーザーが持ち運びに不満を感じており、使用目的に対して手間が大きいことがわかった。また、ユーザーはおいしく焼くだけではなく、火を育てたら熾火を眺めたりすることにも炭火の魅力を感じていることがわかった。そこで本研究では、キャンプで炭を使用するハードルを下げるとともに、焼くだけではない炭の魅力をより楽しめるようにすることで、初心者でも上級者でも楽しめる炭を提案する。
  • 左利き者の書字動作における適切な姿勢の提案
    山﨑 美怜
    世界人口の約10%が左利きである。生活の中でも特に書字動作は日常的によく行う動作であり、左利きが不便に感じることも多い。しかし、左利きの書字に対する指導はなく、個々に不便を解消する書き方を身に着けてしまうことで、姿勢や疲労などに影響を与えるのではないかと考えた。そこで本研究では、左利き者の書字動作における上肢の姿勢と紙の位置との関係を検討し、適切な姿勢を提案することを目的とした。
  • ウェディングコスチュームによる、自己表現体験の提案
    柴田 真衣
    ウェディングドレスは結婚の象徴として、各時代の結婚観をそのデザインに反映させてきた。現代の日本での結婚観は「家」から「個」を重視する思考へと変化してきている。そこで本研究では「個」に注目し、結婚における男女の役割ではなく、その人自身に焦点を当てた新たな「ウェディングコスチューム」を考えた。ワークショップを行い、自分でコスチュームを作るという体験を通した「個」を表現するコスチュームの提案を行った。
  • 子宮頸がん検診のための配布物についての研究
    田村 優衣
    現在、日本においてがんは死因の第1位となっており、「子宮頸がん」はがんなかで唯一20代から受診が可能であるが、その受診率は3割を下回っているのが現状である。そこで、本研究では、ユーザにタッチポイントの多いリーフレットなどの配布物に着目し、検診受診率の低い若い世代が子宮頸がんに対して興味や関心を持つような配布物をすることを目的として研究を行った。
  • 高地環境での運動負荷に対する生理応答の個人差とその要因
    河野 陽介
    高地環境では酸素分圧の低下により換気量の増加、心拍出量の増加といった生理反応や急性高山病(AMS)発症リスク増大などが起こると言われているが、そこには個人差が大きいことが知られている。本研究は登山経験という因子に着目し、高地に対する適応にどのような影響を及ぼし、どういった生理学的特徴を示すのかについて検討することを目的とした。
  • 負担の少ない傘のグリップの検討
    前田 夏輝
    グリップの形状的工夫によって筋活動の減少や荷重性の上昇などが報告されている。様々な把持部やグリップの研究はあるが、傘のグリップに関する研究はない。そこで本研究ではグリップ形状による傘の使用者の負担を減らすことを目的として、被験者に異なるグリップを把持した状態で風を受けながら直立してもらった。右手の上肢の筋肉の表面筋電図を測定し、主観評価を行った。結果は筋活動のグリップによる主効果はなかったが、風や握り方による違いが見られた。
  • ミッドソールの硬度が階段降段動作の衝撃緩衝性と安定性に与える影響
    原田 咲月
    階段降段は、接地時に大きな衝撃を受けることや不安定になりやすいことから、衝撃吸収や安定保持がより求められる動作といえる。靴着用時にはミッドソールが衝撃を和らげ安定を保つ補助をするが、ミッドソールは材質によってその特性が異なる。本研究では、ミッドソールの硬度が階段降段動作の衝撃緩衝性と安定性に与える影響を検討することを目的とした。
  • 折り紙の技術を応用した、 子どもが空間を生み出すためのデザイン提案
    鹿嶋 洋邦
    子どもの遊びには屋内外で様々なものが存在する。屋外では全身を使った遊びがあるが、屋内では全身を動かして遊ぶ機会は少ないと考える。そこで、本研究では折り紙の技術を応用した、子どもが屋内で全身という身体のスケールを使って遊ぶことのできる遊具「Patanto(パタント)」を提案する。本提案では、主に空間を形成するときに全身で遊ぶことができ、形成したあとも自由に微細運動ができるデザインとなっている。
  • 価値観の違いに着目した「ハッとする体験」のデザイン提案
    藤本 清楓
    自分にはない考えを知って、物事の見方が広がるような体験づくりを本研究の目的とした。調査より「価値観を可視化させること」「それに対して意識的に向き合うこと」がその条件であると考え、「日常的な行為」をお題としたカードゲームの提案を行った。プレイヤーは、多様なイラストの中からお題に対する自身の価値観を3つのカードで表現し、周りはそれを見て独自の解釈を行う。お互いの解釈には何らかのズレが生じ、それを通じて気づきや発見が生まれる。
  • パン屋を構成する要素に関する考察と提案
    筑波 千晴
    2014年にパンの支出額が米の支出額を上回ったことを機に、日本では現在パンブームが起きている。本研究では、「パン屋を構成する要素」という観点から、調査、加えて分類と分析を行った。この結果、パン屋は、お店の外から内装が見える形式に変化しつつあった。私は、もっと外からパン屋の魅力をアピールできる店舗を作りたいと考え、コンセプトを「お客さんがウィンドウショッピングできるパン屋」とし、BROWSERYを提案した。
  • 色字共感覚の習得と暗記学習への活用
    若林 紘平
    色字共感覚とは文字に色がついて見える現象のことである。本研究で行った色字共感覚者へのインタビューで、文字と色を関連付けることができるので暗記が容易だとの発言があった。そして、この色字共感覚は後天的な訓練により、ある程度習得できることが知られている。これらのことから、後天的な訓練による色字共感覚の習得が暗記学習に及ぼす影響を検討した。
  • 現代日本の男女平等に関する議論を誘発するデザイン
    坂宗 汰樹
    「今日からはじめるジェンダー教育」は、話しづらく目を背けられがちなジェンダー問題について、人々がもっと話せるようになるためのデザイン提案である。話しづらさの原因には人々がジェンダー問題に「関わらない」「分からない」といった状況があるが、これらを改善するために関心を喚起する広告媒体と、問題の現状や改善策の情報を提供するメディア媒体を制作した。
  • 新たなノイズ観に触れる機会の提案
    小川 日菜子
    ノイズは定義として「騒音」「雑音」などのネガティブなイメージがある一方で、日常で受容・活用されている側面がある。本研究では、このようなノイズの多義性を探究するために、制作を通して自身のノイズ観について考察した。また、自身のノイズ観の思考の過程と制作物を提示し、新たな視点での鑑賞体験を与えることでノイズ観について考える機会を作ることを狙いとする。
  • 日本の都市におけるスケートボード問題解決のための研究
    隈本 理恩
    日本におけるスケートボード問題を解決するために。下位文化理論に基づくスケートボーダーの連携の可能性、そして問題構造学的分析を行い解決すべき問題と解決方法を示す。研究をもとに塩原中央公園を舞台にワークショップを企画し、スケートボーダーと非スケートボーダーの相互理解のある社会を目指す。
  • 筆跡が表象する第一印象と評価者性格特性の関係
    眞岸 聖奈
    第一印象とは、初対面時に評価者側、被評価者側、認知の場の要因が交差し形成される他者の印象評価である。そのうち評価者性格特性と第一印象の関係を研究する。その際、第一印象形成に影響する交差的要因を統制するため、被評価者の人物像表象手段として近年使用機会が減少し与える印象が強くなりうる筆跡を採用し、筆跡が形成する第一印象と評価者性格特性の関係を把握する。
  • 温熱環境に対する体温調節反応の個人差についての研究
    青沼 弦
    本実験では、被験者ごとに異なる中立平衡気温を算出し、その気温を基準として温熱曝露を行った。その結果、指尖皮膚温や指尖血流量において、大きな個人差が生じる結果となった。これらの個人差について、体格や生活習慣との相関を見た結果、体脂肪率と運動習慣が大きく関係していることが分かった。
  • 若者の日本茶の消費拡大に向けたデザイン研究
    本松 優花
    近年、ペットボトル飲料の普及に伴い、安価な茶葉の需要が高まり、茶農家は利益を得にくくなっている。そこで、特にペットボトル飲料の利用率が高い若者の茶葉の消費を促進することを目的とした。カフェインを多く含み高い眠気覚まし効果がある玉露を使い、エナジードリンクに対して健康面での不安を感じる若者に向けた、ヘルシーな眠気覚まし「GREENENERGY」を提案した。
  • 大学生の寝落ちの実態と寝落ち環境下における睡眠について
    玉置 倭
    NHK放送文化研究所が発表したデータでは日本人の睡眠時間は1970年と比較して45分ほど減少していることが報告されている。睡眠時間の減少によって日中の睡眠や寝落ちが以前より増えている可能性が高い。しかし、寝落ちによる先行研究はほとんど存在しないのが現状である。そこで本研究では日本人大学生・大学院生を対象に寝落ちの実態を調査し、寝落ち環境下における睡眠と通常の睡眠と比較することを目的とした。
  • 組木の魅力を活かした新しい表現の探究
    波照間 颯太
    組木とは日本に古くから伝わる伝統的な木工手法であり、木材に切れ込みを入れて釘や接着剤などを用いらずに木材を組んでいく。伝統的な寺社仏閣などに組木の技法が用いられており、その一番の特徴は組み替え可能な点にある。そのような特徴をより身近に感じることはできないかと考えデザインしたプロダクトがKUMIKIである。自由自在に形を組む事ができ、自分の間取りに合わせたサイズなどの棚を創り上げることができる。
  • 実店舗における新たな体験価値のデザイン提案
    成田 慎哉
    新型コロナウイルス感染症による外出自粛により、ネット通販の利用者が増加し、実店舗小売店に足を運ぶ顧客が減少している。そこで、顧客が実店舗に求める価値も変化したのではないかと考え、ポストコロナの世界で人々が求める実店舗の存在価値を調査し、店舗の提案を行った。「作る」という体験に着目し、製作から売るところまでを体験できる店舗「紡ぎ舎」を考案し、人々が訪れたくなるような仕組みや内装の設計を行った。
  • 異なるテーピングの巻き方が 足関節の安定性と可動性に及ぼす影響
    松尾 優太郎
    足関節の怪我において足関節捻挫は代表的な外傷の一つであり、最も発生頻度が高くなっている。また、テーピングは足関節を適切な位置に保持し、足関節捻挫の予防や再発防止に効果があるとされている。そのため本研究の目的はテーピングの違いが、足関節捻挫の主な要因である足関節の安定性と可動性に及ぼす影響の考察とした。結果より、それぞれの動作に適した適切なテーピングの選択が出来るようになることが期待される。
  • こどもの量感覚を培う「面積を測定するプロダクト」の研究
    岩下 恵都
    面積は概念的で理解が難しく小学生の苦手な分野である。かつ、近年はデジタル化が進んでいることにより、面積の量感覚の低下が問題として挙げられる。そこで、小学生の面積の量感覚を培うために、「面積を測定するプロダクト」を制作した。棒状パーツと目盛りは連動して動き、上から見た時に棒状パーツが動いた分の面積が目盛りに現れる。モノを触り、パーツを動かし、はかる体験がエピソード記憶となり、量感覚が培われていく。
  • 舗装路での歩行に適した下駄の提案
    柴田 瑞
    下駄の問題点に歩きづらさがある。その理由に下駄が現代の硬い舗装路に適していないことが挙げられた。したがって本研究は地面の硬さの違いが下駄歩行動作に与える影響を明らかにし、下駄の改善案を提案することを目的とした。歩行動作測定の結果、矢状面における足関節角度の荷重応答期、立脚終期、前遊脚期に影響がみられた。以上より下駄の衝撃緩衝性を高め、前歯に曲面をつけ、下駄先端に面を作り滑りにくい素材を貼ることを提案した。
  • ニットを応用したデザイン研究
    佐野 虎之介
    近年、手芸の技術のある世代の高齢化によって、次世代への継承が困難になってきている。その結果として趣味として編み物をする人口割合の減少が問題視されている。本研究では、ニットを対象に、若い世代に受け入れられていない使い手側の課題と、「編み物」の作り手側の課題から、新たなデザインの可能性をもたらす要件を抽出する。その要件をもとに新たなデザイン提案を行うことを目的とした。
  • 屋外風呂におけるくつろぎのデザイン研究
    木下 快
    屋外風呂に設置されている椅子でくつろぐ人は多いがキャンプ用の椅子で代用されているなど、屋外風呂において最適なくつろぎの環境が整っているとは言い難い。そこで本研究では、屋外風呂でフィールド調査を行いユーザーの潜在的なニーズを考察した。考察をもとに屋外椅子のプロトタイピングを行い、最終提案として屋外風呂でくつろぐためのラウンジチェア「OpenAirLounge」を制作した。
  • 生体情報の相互認知を用いた深層的なインタラクションの提案
    附柴 元亮
    コミュニケーションにおいて我々は言葉によるバーバル情報だけでなく、身振りなどのノンバーバル情報、そして心拍などの生体情報を身体から発信している。なかでも生体情報は発信する生体の意図による情報操作が不可能なことから、最も本質的かつ重要な情報であると考えられる。そこで、生体情報の一種である心拍を相互認知できる表現を四つの作品制作を通して検討し、深層的なインタラクションを提案した
  • 花を贈る習慣から考える贈答用の花のデザイン提案
    金田 彩花
    花を贈ってみたいと考える人々や、コミュニケーションの一環として贈りものなど、人々が花を贈るチャンスがある一方で、若者の花の購入額は少なく、また、花は特別な日のギフトという認識が強いという現状がある。花贈りの本質は、花に自身の気持ちを込めて渡すことにあるとし、その行為を促すパッケージを製作した。パッケージにメッセージを書きこみ、それを花とともに渡すことで、花に思いを込める体験を再現する。
  • 愛されるオリジナルマスコットの特徴について
    松浦 七星
    自作マスコットについて自身の人気の予想と実際の評価が異なることがよくあったため、人はマスコットのどんな特徴を見て好ましいと感じているかに興味を持った。本研究ではグループインタビュー調査からマスコットに対する評価構造を調べ、それを元にアンケート調査を行い愛されやすいマスコットの特徴を抽出した。抽出された5つの特徴からマスコットを4つ制作した。
  • 男性ファッションの変遷について
    ― 専門誌の記事に着目して
    前田 皐
    ファッションにおいて使用されている色・形態・素材などは変化している。そこで、本研究ではファッション誌の記事に着目して、ファッションに関連する語彙変遷を時系列的に分析し、男性ファッションの変遷について明らかにすることを目的とした。考察では、5年ごとの領域が拡散しており、現在にかけて多様化していると考えられる。
  • 化粧品のパッケージのアップサイクルに関する研究
    武谷 歩美
    化粧品のパッケージは複数の要因からリサイクルが難しいとされてきた。今回は、化粧品のパッケージの高いデザイン性に価値を見出し、アップサイクルに着目した。調査より、パッケージの形が一定でないこと、共通部もあること、形・加飾を活かすこと、量産できることが条件として導出された。そこで、本研究ではユーザ自身が手持ちの化粧品のパッケージをアップサイクルするための、3Dプリンティングを用いて製作したパーツシリーズを提案する。
  • 単身高齢者のコミュニティへの参加を促す移動体験のデザイン
    張 龍輝
    日本では一人暮らしの高齢者(単身高齢者)の継続的増加が予想される。単身高齢者が長期的な心身の健康を維持するためには社会的孤立を回避することが重要とされているが、単身高齢者が一人で外出しコミュニティに参加する過程には移動に関する様々な課題がある。これらの背景を踏まえ、研究テーマを「単身高齢者のコミュニティへの参加を促す移動体験のデザイン」とし、主に福岡市南区若久地区を対象に提案を行った。
  • ビールによるコミュニケーションデザイン研究
    清水 楓吹樹
    ビールの特有の乾杯文化に着目しました。現状ではコミュニケーションの視点から見ると精神的な満足感が十分にでデザインされていないと感じ研究を行うこととしました。文献調査からは、乾杯行為がコミュニケーションに有用なツールであることがわかり、そこから、楽しい、面白い乾杯を目指すことに決定しました。最終提案として、楽しい、面白い乾杯を実現する「乾杯すると音が鳴るグラス『Kanpana』」を制作しました。
  • 注意欠如・多動性障害の特性と断眠時の課題成績の関係についての検討
    尾関 雅子
    過去の研究結果から、ADHD患者だけではなく健常者でも、睡眠不足の状況下においてはADHD様行動が悪化し、ADHDの特徴である報酬系の障害が顕著に見られる可能性がある。本研究では、研究が十分でない成人期ADHDに関して、断眠時の報酬系課題のスコアを用いて、ADHDの各特性と課題成績との関連を検討することを目的とした。結果、ADHDの個人特性と睡眠不足時の報酬系障害との関連が示唆された。
  • 映画館の多目的利用について
    内尾 良太朗
    「映画館は映画を見る場」「映画館は映画好きのための場」このイメージが強いが、映画館にはほかにも魅力がある。今回は映画館で眠る人に着目し、休憩という観点から調査を行った。調査をふまえて映画館に対する人々の認識を変えていけば、映画館は罪悪感なく休憩できる場として促進される可能性があると考察した。そこで提案物として仕事と休憩が楽しめる、映画目的でなくても来ていい多目的映画館「bench」を提案した。
  • 人間が作る乱数列による個人認証システムの作成とその脆弱性の検討
    松浦 健太
    人間が作る乱数列には作った人の癖や状態が反映されるとされている。この性質を利用して個人認証に応用する試みがなされている。識別の際は系列からいくつか指標を計算しその値を基に推定を行うが、使われる指標は様々である。本研究では主に先行研究で使われていた指標を8つ用いて個人の識別を行い、その有効性を比較した。結果59%程の精度で識別できたが、今回用いた指標間には有効性に大きな差はないという結論に至った。
  • シットスキーの座面角度が健常者の下肢筋に与える影響
    嶋田 悠二
    下肢障害のあるクロスカントリースキー競技者は,シットスキーを使い座位で滑走する.座位での推進に用いられるダブルポーリング動作に関する研究は,被験者となる競技者が少ないことから,健常者を被験者として実験が行われている.先行研究では,健常者特有の下肢筋の活動が指摘されている.本研究では,シットスキーの研究を加速させるため,座位姿勢における健常者の下肢筋の影響を複数の座位条件から明らかにした.
  • 通常浴とマイクロバブル浴における体温調節反応の比較
    中林 暉裕
    近年注目されている入浴法にマイクロバブル浴がある。マイクロバブルとは1μmから100μmほどの小さな微細気泡のことで、これを浴槽の湯中に充満させることでマイクロバブル浴になる。本研究はこのマイクロバブル浴の温浴効果を明らかにするために、一般的に広まる通常浴と比較実験をした。成人男性16名の被験者に両法の入浴を行ってもらい、深部体温や皮膚温、発汗量、皮膚血流量などを測定し比較した。
  • 推しの概念化に着目したカスタマイズサービスのデザイン提案
    帆足 夏央
    「推し活」は、2021年流行語大賞にノミネートされ、注目されている事象の一つである。自分の好きなものを隠さず公表できる時代における、新たな推し活の提案として、推しがいる人をターゲットとした入浴剤カスタマイズショップ「Favel」を提案する。推しの概念化に着目した4つの体験を通し、あなたが思う「推しっぽい」入浴剤をカスタムすることができる。
  • 児童の興味関心を引き出す図鑑の研究
    田中 瑛人
    本研究は、科学コミュニケーションとしての図鑑に着目し、デザインの視点から、必要な要件と現状の図鑑の課題点を明らかにする。その上で、新たな図鑑のデザインを提案することを目的とする。探検先の生物の観察で、擦る・採る・描く・透かすの4種類の方法で図を作成し、自宅で制作した図を本のページにレイアウトして自分だけの図鑑をつくる体験「図探(ずたん)」を提案する
  • 染めの技法を利用した平面作品の表現に関する研究
    凌 亮太朗
    本研究ではろうけつ染めを基本の表現技法に据え、和紙を媒体にして、試行・分析を繰り返し行うことで、新しい平面作品の表現の方法を追求した。旧来のろうけつ染めに用いられる布ではなく、和紙を利用したことで、和紙と蝋の素材の性質による表現と、和紙と光との相性による表現が得られた。また、条件を変えながら試行し、得られた現象の分析をすることを繰り返すことで、無心でも確かな方法や方向性が湧き出て、予測を上回る表現が生まれた。
  • 日本の歴史とグラフィック広告の関係性
    天野 公美子
    世界のデザイン史を調べると、社会の出来事がデザインに変化をもたらしていた。この事実は日本でも同様だと考えた。そこで、社会変化などの日本の歴史がグラフィック広告にどんな変化を引き起こしたのか調査・考察した。期間は経済が発達してデザイン活動も活発になる1950年から現在までとし、最終的に、考察結果を整理してまとめた本の制作を行った。
  • 健康寿命を延ばすデザイン研究
    菊田 涼輔
    高齢化していく現代社会ではより楽しく、長く人生を楽しむために、問題なく日常生活を送れる期間である健康寿命、この延伸が一つの課題になっています。そこで今回、高齢者の方が健康を維持するうえで見落としがちな「手指」の運動に着目し、簡易でありながらより多様な運動を行えるようにすることで、脳の運動を促しやすいデザインをしました。
  • 没入感のある体験を誰もが簡単に楽しめるメディアの提案
    佐藤 雅之
    近年、VR(仮想現実)が話題になるなど、没入感のある体験への需要が高まっている一方で、VRやシアターなどは手軽さに欠ける。一方ビジュアルノベルはPCで閲覧可能であり、コンテンツ制作も比較的簡単である。しかし静的になりがちな点と、インタラクションに乏しい点は否めず、これらを解消すればより没入感が得られるのではないかと考えた。本研究では、ビジュアルノベルをベースとし、より没入感が得られるメディアを提案する。
  • 網膜メラノプシン細胞の瞳孔の対光反応への寄与に関する研究
    今泉 一輝
    近年になり錐体・桿体に次ぐ第3の光受容体であるipRGCが発見され、光の非視覚的作用に大きな影響を与えているということが判明した。本研究では、錐体への刺激量は変えずにipRGCへの刺激量のみ増減させた光刺激(メタマー刺激)を作成し、pRGCの光の非視覚的作用への寄与を検討するために作成したメタマー刺激を用いて瞳孔の対光反応を測定した。
  • 依存行為観察時のミラーニューロンシステム活動
    ― スマートフォン依存に着目した研究
    海野 真乙
    スマートフォン依存の割合が若年層を中心に年々増えている中、ゲーム障害がICD-11(国際疾病分類)に追加されるなどして、行為依存に対する注目が高まっている。本研究では行為依存であるスマートフォン依存がミラーニューロンシステム(MNS)に影響を与えるかどうか調べた。結果、スマホ以外の刺激に注目させる条件では、依存群でスマホ把持動作に対する強いMNS活動が確認された。この反応が依存の原因であるかはさらなる研究が必要である。