工業設計学科のまいにち
イタリアに交換留学して分かった
工業設計学科の面白さ
橋本 幸
Sachi Hashimoto
イタリアに交換留学して
ミラノ工科大学に留学して約半年が経ちました。こちらでは、1つの授業が4時間なので、1日8時間、2つの授業を受けます。その時間、ずっと話し合いや作業をするのですが、日本と違うと思ったのは、グループで一緒にやろうという気持ちが強いことでした。コミュニケーションを大事にしていて、何でも楽しみながら取り組んでいます。食事をしながらミーティングをするなど、勉強も作業も生活の中に組み込んでしまうところにも驚きました。日本では個人ワークで要領よくやることが多かったので、効率が悪いと感じることもありますが、イタリアに来て大らかになりました。
こちらではベンチをデザインする授業をとりました。デザインと言ってもすぐにモノを作るのではなくて、5人ぐらいのグループで調査をすることが課題でした。不思議なことにイタリアにはベンチが少ないのです。階段とか、地べたに座るんですね。既存のベンチにとらわれずに、こんなベンチがあったらいいな、というのを提案するのが調査の目的でした。初めはイタリア語もあまりできなかったのですが、私も資料を作って、皆に見守ってもらいながら勇気を出して発表しました。
今では、日常生活ではイタリア語で困らなくなりましたが、デザインでは、絵を描けばコミュニケーションできるということも分かりました。イタリア人はプレゼンテーションが上手で、本当に自分の作品を見てもらいたいという強い気持ちが伝わります。自分の作品や考え方を見つめる機会もあって、逆に自分の感覚は日本的だということにも気づきました。
外に出てみて感じた工業設計学科
例えば、ミーティングなどで、デザインの学生と話しているときに、工業設計学科の人間工学の必修科目で学んだ、照明が睡眠に与える影響や、ベンチの高さと人の身体の関係などの話題を出すと議論が広がります。ミラノ工科大学では、エンジニアリングを専攻しないと、このようなことは学べないので役立っています。
高校時代も絵を描いていたのですが、感覚よりも知識に基づいた考え方の作品制作に興味がありました。それで工学系のことを勉強しようと思って工業設計学科に入学しました。入学した当初は、工学なのか芸術なのか、はっきりせずに迷ったときもありましたが、外国に出てから、色々なことを勉強するのが好きなのだと自信を持って言えるようになりました。デザインをするにもただ形をつくって終わりではなくて、構造を考えて、実際に設計までしたいと思っています。そういう意味で工業設計学科は良かったと思います。